25th
         サントリー
        
一万人の
         
第九

         主催:毎日放送
       協賛:サントリー株式会社




2007年12月2日(日)

 前日のリハーサルから続いて良い天気でした。25回目とな
る記念の回でもあります。いろいろと企画がある為にいつもよ
り早い集合になりました。



<お知らせ>
この日の様子は12月23日(日)の14:00〜14:54 に大阪毎日
放送(MBS)をキー局として、東京放送(TBS)、北海道放送
(HBC)、中部日本放送(CBC)、RKB毎日放送(RKB)、5局
ネットで放送されます。




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 午前9時に集合して9時30分から最終の席決めが始まりまし
た。今年はオープニングとラストでイルミネーションで人文字
を作る為に、所定の場所の椅子には袋が貼り付けてあります。
男性は比較的早く移動が終るはずなのに、今年はどうもゴタ
ゴタしている。微妙にキリが悪いのだろうか、男性全体が左に
一つ動くと言う事になり、テノールの一列がバスの中に入ると
いう異例の場所決めとなった。そのために僕は、イルミネーシ
ョンを担当する事になったのです。合図に従ってサイリューム
を折ってオデコの位置で横向きに持つというもの。
 この辺りから遅れだして、女性の移動も手際が悪い。同時に
あっちこっちを動かせば良い物を、一つ一つのグループを動
かすので予定の時間では終らない。
 更に今年はオープニングで東京のサントリーホールと繋いで
同時に演奏をすることになっており、その中継のテストで収拾
がつかなくなっている。ここで時間調整に15分間のトイレ休憩
を入れたから、さあ大変。とても15分では終るはずもなく、男性
さえも間に合わない。ちょっと出だしが遅れた僕も、トイレの中
で発声練習が始まったのを聞いた。前日から喉に軽い痛みを
覚えていたので、ちゃんとしておきたかった。恒例の「肩叩き」
には間に合わなかったものの、何とか発声練習を終える事が
出来た。
 引き続き清原先生も気になっていたのだろう。オープニング
曲の「Orbis」のパート練習をしてくれた。この曲は、25回に合
わせて久石譲さんが特別に書き下ろしてくれた曲なのですが、
楽譜が遅れた為に練習が出来ていなかったのです。楽譜が
読めるわけではないので聞かないと分からない。ようやく感じ
がつかめてホッとした。一万人の合唱団が歌うところは、最初
と最後の部分だけなので何とか行けそう。
 15時丁度に始まった。ゲネプロでやったようにサイリューム
の人文字が浮かび上がる。暗い場内に鳴り響くサントリーホー
ルからのパイプオルガンの音色。「Orbis」で始まった。まだ自
信は無いが宇宙からの音のような雰囲気は出ていたのではな
いだろうか。特別合唱団の歌う難しい部分はかなり苦労しただ
ろう。上がり下がりも激しいし、リズムも取り難い。久石ワールド
炸裂と言った感じの曲だ。
 曲が終ると司会の小倉さんが登場し、作曲家の久石譲さんを
紹介する。久石さんも楽譜が遅れた事は申し訳無いと思ってい
るのだろうが、今日の出来には納得してくれたようです。
 第九本番が始まった。いよいよだと思うと気持ちが引き締ま
ってくる。実は休憩の間に、少し体が熱っぽくなって来ていた
のだ。ちょっとやばいかもと思いながら、第九の演奏を聞いて
いた。ところが不思議なもので、第九の演奏が進むに連れて
熱がひいて行く感じがした。同時に喉の痛みもなくなってくる。
集中すると人間は体をコントロールするのだろうか。この不思
議な状態ではあるが、僕にとっては嬉しいことだ。
 第三楽章でソリストたちが入ってくる。気持ちの良い緊張感
で満たされて出番を待つ。あと少し。
 オーケストラの激しい戦いの後は、静かにテーマ曲が流れ
てくる。馴染みのある部分です。場内の明かりがついて客席
と一緒に歌うテーマ。佐渡さんもこの時ばかりは、客席を向い
て指揮をする。会場全体が一つになる瞬間だ。
 一転して男声合唱が渋く入る「ザーイト ウムシュルンゲン」
女声合唱も入ると静かなメロディーに変わって行く。神への
感謝を表し、祈るような歌が続く。その静寂を切り裂くように
始まるのが二重フーガ。各パートがそれぞれ別々の歌詞で
掛け合わせるように歌う部分です。第九の一つの聞かせど
ころでもあります。もう頭の中で考える事も出来ず、反射的に
歌が喉からあふれ出してくる。テンポを取る為に、手を小さく
振りながら、自分のリズムを作って歌う。ここまで一緒に練習
をしてきた隣の人も同じように手を振っている。もう体全体で
歌いたいといったっ気分です。クラシックなので踊りだす訳
には行きませんが、東海林太郎のように直立不動で歌うの
も、この佐渡さんの第九には合わない。来年からは、もっと
アクション付でも良いということにならないかな。それにしても
今年は本当に歌っている間の記憶が無い。歌い切ったとい
う事は確かなのだが、細かいところを覚えていない。それ程
歌うことに集中していたのだろうか。
 終った。ちゃんと歌いきった。そんな満足感で一杯だった。
体調はこれまでで一番良くなかったが、合唱は一番良かっ
たと思えた。一万人の合唱団が、本当に一つになって歌っ
たと思う。その喜びは誰もが感じたことだろう。毎年、その完
成度が増してきている。それが素人の僕にも十分分かる。
 最後の「蛍の光」が流れる。こちらは逆に全く進歩しない。
歌い終わって気が抜けているのか、自分なりに歌っているか
らコーラスにはなっていないし、多分佐渡さんの指揮は見な
いで音を聞いて歌っているからだろう、遠くの人はズレまくっ
ている。ある意味では、会場全体に大きな波を打っているよ
うで良いのかもしれない。(笑)
 会場が一旦暗くなって司会の小倉さんの音レーションが始
まると、僕は最後の仕事「25」の人文字作りをする。今回は最
初と違って真ん中の人だけで、「第」と「回」は無い。片手で
人文字を作り、もう一方でペンライト型のサイリュームをゆっく
りと左右に振りながらエンディングとなりました。
 第九本番が終ってからは、これもお楽しみなクラスの打ち上
げです。3ヶ月間一緒に練習をしてきた仲間や先生との打ち
上げが良いのです。これをする為に頑張ってきたようなもの。
やはり本番の流れでするのが一番盛り上がりますよね。
 打ち上げ会場に着くと既に一杯の人。終ってそのまま来て
いる人が多いのでしょう。今年は人数の関係か丸テーブルを
一つ占拠。顔馴染みと和む反面、他の人たちとの関係が少し
薄くなってしまって、新しい出会いは無かったです。
 ゲームコーナーは、今年はクイズ形式だったのですが考え
過ぎであえなく一問目で撃沈。敗者復活戦も同じく一問目。
殆ど参加できないままに終ってしまいました。
 と、そこへ遅れて清原先生とピアノの矢吹先生が登場。今年
も良い出来だったと褒めてくれました。そして、ゲストを連れて
来たらしい。

まさか、中島美嘉? そんなわけ無いでしょ(笑)

韓国の合唱協会(?)のお偉いさんらしい。奥さんと二人です。
これで日本と韓国の合唱の交流を深めようなどと話しながら、
娘さんが韓国では有名なバイオリニストだと言うので、その娘さ
んはと期待していると来ているようです。更に、この第九の取材
なのか清原先生について来た音楽雑誌の記者さんまで。打ち
上げも取材したいらしいのです。ウエルカムですよ。ドンドン撮
ってください。って、僕が言うことではないけど。

 そうこうしている内に、その娘さんがバイオリンを持って壇上
に登場。CDのカラオケを持ってきているようで音楽が流れると
バイオリンの演奏が始まった。長い黒髪を振り乱しての演奏は
なかなかカッコイイ。クラシックではなく聞き覚えのあるポップな
音楽です。イメージとしては葉加瀬太郎さんを想像してもらえ
れば良いと思います。
 予想していなかった展開にみんな大興奮。立ち上がって手
拍子を打っています。まさか打ち上げでこんな演奏が聴ける
とは思ってもいなかったですからね。先生も「これは第九の打
ち上げですよ〜〜〜!」って冗談を言うくらい盛り上がった。
全部でアンコールを入れて4〜5曲やってくれました。最後に
はサイン会もあった。

 この盛り上がりの後は、恒例の清原先生の誕生のお祝い。
蝋燭をともしたバースデイケーキが出てきて「ハッピーバース
デイ」を合唱して蝋燭を吹き消す。そして、これも恒例のみん
なの誕生日を月毎に祝う。順番にステージに上がって、みん
なから祝ってもらう。全員の誕生日が終ると一段落のはずが
今年はハプニングの演奏があった為に時間が押していた。

みんな歌いたくてウズウズしている第九の合唱だ。時間が無
い為にかなり省略してしまった。ちょっと残念。

 最後はお決まりの懐かしのフォークソング「翼をください」と
「今日の日はさよなら」で締めて打ち上げも終った。こちらも
あっという間だった。今年は、本当に考える間もなく終ってし
まったと言う感想だ。でも、楽しかったので良しとしよう。来年
も一緒に歌いましょうと挨拶を交わしながら家路に着いた。
 11時からは、本番と同じ進行で進めるゲネプロが始まりまし
た。合図を受けてサイリュームを折ってオデコのところに横位
置に持って行く。やっている本人達はどうなっているのか分か
らないが、向こう側にいるソプラノとアルトの人達が「おーっ!」
と声を上げたので綺麗に見えるのだろう。モニターにも何とな
く「第25回」と言う文字が浮き上がっていた。
 突然鳴り出したパイプオルガンの音にビックリ。映像も入っ
てきてリハーサル開始です。モニターで佐渡さんの指揮を見
て東京で演奏を行うので、映像によるズレが懸念されるところ
ですが、放送局の技術を駆使してズレが出ないようにしてい
るらしい。それなら会場モニターも何とかしてくれと思ったのは
僕だけだっただろうか?(笑)
 無事に「Orbis」が終わり、今年も司会の小倉さんが登場して
来た。小倉さんもこの大阪と東京の中継には驚いていた。
 引き続き25回を迎えた「一万人の第九」を提唱した故山本直
純さんのメドレーを終えて、歌のゲスト中島美嘉さんが昨日のリ
ハーサル同様、今日もナチュラルメークで登場して来た。最初
の「LIFE(オーケストラバージョン)」はまだ合っていないような
気がした。美嘉さんも半身で佐渡さんの指揮を横目に見なが
ら合わせようとしているようだった。他の曲は何とかなりそうだ。
第一部の練習が終ってここでもう一度休憩に入ります。今年は
近くの席になった妻やその友人と一緒にお弁当を食べることに
しました。
 今年も始まった。ソリストに続いて男声合唱の「フロイデ!」
ピタッと決った。本当に一つの声となって飛び出した。今年も
良い感じでスタートでした。女声合唱も加わった「ダイネ ツァ
ーベル」ゲネプロの時よりも聞こえる声にズレが無い。今年は
凄い事になるかも知れない。そういう予感がした。
 順調に進んで前半の見せ場「フォール ゴット!」になる頃
には、完全に合唱団は一つのものに向って進んでいた。声の
限りに歌う「フォール ゴット!」実に気持ちが良い。まさに神
に届けと言わんばかりの合唱だった。
 男声合唱だけで歌うマーチの部分では、誇らしく行進して
いる気分だ。佐渡さんの特別レッスンの時のように肩を組ん
で歌いたい気持ちを抑えながら、冷静に歌うつもりだったが、
興奮していたのだろう。今年はテノールUと言って、テノール
が二つに分かれて歌う時の低い方を選んだのに、途中から
以前歌っていたテノールTを歌ってしまった。
 ここからはラストスパート。「ダイネ ツァーベル」のパート。
佐渡さんのテンションも上がってきます。何とかここまでもっ
ていた僕の喉も限界に来たのか、少し出にくくなって来た。
やはり治ったわけではなく、風邪気味のままなので高音は
辛くなったのだろう。しかし、ここまで来ると力いっぱい歌い
たいという気持ちの方が強いもので、裏声を使う気にはな
れなかった。この勢いのまま終わりたいと言うところだろう。
 そしてプレスティッシモ「ザイト ウムシュルンゲン」へと続
くのですが、今年の佐渡さんは例年にも増してここが早いの
は前日の総合リハーサルの時から分かっていた。
 合図と共に歌いだす。予想をはるかに上回るスピード。
一瞬オーケストラが付いて行けない位の早さだった。ゲネ
プロの時佐渡さんは言っていた。僕は合唱団に合わせて
指揮をするから。合唱団の勢いそのままに指揮をしていた
のだろうか。いや、佐渡さんの気持ちそのままに振ってい
たのでしょう。すぐにオーケストラも追い付き、佐渡さんも合
わせてくれた。怒涛の如くフィナーレを迎えた。「フロ〜イデ
シェ〜ネル」既に最後の「ゲッテルフンケン」は出るはずも
無かったが、そのまま歌いたかった。声が割れるのは分か
っていた。でも裏声で歌うと悔いが残る。そんな気持ちだっ
た。力いっぱい歌いきって終りたかった。

「ゲ〜ッテル フンケン! ゲ〜ッテル フンケン!」
 山本直純メドレーに入るとだいぶ和んできた。モニターに映
る直純さんの姿が懐かしかった。映像と言う物は時間を越えて
その元気な姿を映し出す。一度直純さんの指揮でも歌ってみ
たかったものだ。ここは特別合唱団に任せて、僕達は観客に
なれる。最後の曲「歌えバンバン」のサビだけ参加した。直純
さんの息子さんから直純さんの話を聞いていたが、その姿が
何とも親子だった。風貌がそっくりだ。
2007/12/02  「一万人の第九」特別編
 第二部は第九です。まずはオーケストラの演奏の部分から。
一通り終ると今度は第四楽章の合唱に入ります。昨日の総合
リハーサルで起こったバリトンのハプニングが思い出された。
佐渡さんも「今日は大丈夫?」と冗談交じりにいじっていたが、
何事も無かったかのようにバリトンは澄ましていた。実際の歌い
出しの部分でも、佐渡さんはタクトの振り方で思わせぶりな事を
していた。
 毎回思うのだが、佐渡さんの指揮で練習して行くと確実にみ
んなが合って来るのが分かる。こんなにすぐに変わるものかと
思ってしまう。気持ちが一つになって行くのが分かる。
 特に問題も無いという事であっさりゲネプロは終了してしまっ
た。予定時間より早い。もう少し練習したかったが、こればかり
は仕方がないので本番に備えて休憩した。
 下の写真は、僕の席から見た会場の様子です。まだお客さ
んは入っていない時です。
 そして、ゲストの中島美嘉さんの登場だ。その姿は今までと
は違いしっかりとメークをしていた。裸足にふわふわのスリッ
パは高いハイヒールに変わっていた。目の上で切り揃えられ
たストレートヘアはカールされてまとめられ、黒いスリット入り
のドレスとで大正ロマンのモガの様相だった。本番ではテレ
ビで見ている中島美嘉に変身していた。
 最初の「LIFE(オーケストラバージョン)」は、やはり本番が
一番良かった。かなり調整してきたのだろう、オーケストラと
のズレはあまり気にならないほどになっていた。早いテンポの
曲をこれほどゆったりと歌うのは難しいだろう。僕としては、放
送の時期とかも考えると「雪の華」の方が良かったと思った。
オーケストラともマッチして、彼女の歌も映えたであろう。
 2曲目の「The Rose」は、上手くオーケストラと合っていた。
ベット・ミドラーで有名な曲だ。英語で歌っていたが、モニター
に出る訳詩からもこの歌の内容が伝わってくる。勇気を与えて
くれる歌なのだ。
 そして最後は、彼女が選んだクリスマスソング「きよしこの夜」
一万人の合唱団と一緒に歌った。コーラスは無くユニゾンだっ
たが、気持ち良さそうに歌っていた。
 こうして第一部は終了した。休憩を挟んで第九へと進む。