2004/12/05  「一万人の第九」特別編
            22nd
         サントリー
        一万人の
         第九

         主催:毎日放送
       協賛:サントリー株式会社




2004年12月5日(日)

 去年に引き続き前日の総合リハーサルの日に雨に降られ、
本番当日に晴れるという偶然ともいえる天気でした。
朝方はどんよりとした天気で、前日の重い空気をそのまま繁
栄しているかのようです。でも、開演の時にはすっきり晴れ
てきそうなので少し気が楽です。



<お知らせ>
この日の様子は12月23日(祝)の15:55〜16:50に大阪毎日
放送(MBS)をキー局に、東京放送(TBS)、北海道放送(H
BC)、中部日本放送(CBC)、RKB毎日放送(RKB)、JNN系5
局ネットで放送されました。
番組はsonaさんを中心にしてその練習から当日の合唱までを
追ったものです。
それと、ミッシャ・マイスキーさんのチェロは必聴です。



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 大阪城ホールに着くと会
場前の為に、階段まで一杯
の人の海。一瞬いつになっ
たら入れるのだろうと言う
考えが頭をよぎったが、一
旦開場してしまえばどうっ
て事なかった。あっという
間に一万人を飲み込んでし
まった。
 今日ここで始まる物語の舞台を眺めてみた。僕はこの中の
ほんの一つの点のようだが、その一つ一つの力がホールを揺
るがすんだ。とにかく、力一杯歌うだけだ。
 9時30分に集合して今日の工程と諸注意が告げられる。
そして、いよいよ10時から席詰め作業にかかる。これで最終
的な席が決まるのだ。結局僕は当初より8席くらい中央に寄っ
た。初めてのアリーナ席。最後列ではあるが中央から3分の1
くらいのところ。まずまずです。昨日よりもずっと佐渡さん
の指揮が見やすくなった。後でわかったのですがこの少しの
移動で音もかなり変わりました。
 思ったよりも移動が早く終ったということで、発声練習に
も少し時間が出来た。この時に今まで気がつかなかった実際
の指揮とモニター画面のズレが解った。これまで遠くで見え
にくい人はこのモニター画面を頼りに歌っていましたが、そ
れが原因で少し遅れると言う事が解りました。これが後で大
きく影響して来ました。と言うのも、前日の総合リハーサル
の時に真横の人から照明で佐渡さんのタクトが見えないとい
うクレームがありました。つまりタクトが見えにくい人は当
然モニターが頼りなんですね。一万人だとさらに佐渡さんの
後方の人も出てきます。こうなるともはやモニターを見るし
かないんです。これだったんです。佐渡さんも「僕の指揮を
見てください」と言うはっきりとした指示を出しましたが、
この時にはまだ原因はわかっていませんでした。

 休憩を挟んでいよいよ佐渡さんが登場。本番さながらの練
習が始まりました。昨日のリハーサルと違ってズレが少なく
なっているのが僕にもはっきりと解りました。佐渡さんも
「今日の合唱は良いよ」と満足そうでした。何か手ごたえが
あったのでしょう。
 ミッシャ・マイスキーさんは、ノースリーブの服で出てき
ました。華奢に見えた体は意外とたくましかったです。この
時点で、sonaさんは自分の歌は歌わずに第九のコーラスだけ
に挑戦するのだと言う事がはっきりしました。

 再度休憩を挟んでお客さんが入って来ます。この時の女性
のトイレの行列は凄まじかったです。ホール側も増設したり
で対応してくれていたのですが、それでも二重・三重になっ
た列を見ると男で良かったと思ってしまいます。
 これは休憩の時に僕の席か
らオーケストラ、客席を見た
様子です。この間には合唱団
が8列いるわけです。
 アリーナの椅子は客席です。
スタンド席は今見えていると
ころのすぐ横まで、ソプラノ
とアルトが来ています。
 15:00 いよいよ一万人のコンサート開演です。
オーケストラが入場してきました。続いてコンサートマスタ
ー、そして、佐渡さんの入場です。

 まず初めは今年のアテネオリンピックにちなんでJ・ウィ
リアムズの「オリンピック・ファンファーレ・アンド・テー
マ」です。オリンピックの時には良く耳にした曲です。演奏
が終ると司会の小倉智昭さんが出てきて挨拶をし佐渡さんと
ちょっとお喋り。その後、今回のゲストであるソロ・チェリ
ストのミッシャ・マイスキーさんの紹介VTRが流れまし
た。ミッシャさんは旧ソ連のラトヴィア共和国に生まれ苦難
の道を歩んだ末、今はアメリカ・ヨーロッパで活躍をしてい
ます。本番では黒っぽい燕尾服風のデザインのジャケットと
ブルーのパンツ姿で登場しました。近くで見ていないのでは
っきりとは解りませんが、上下共三宅一生のプリーツのよう
に思えます。でも、僕はリハーサルの時の格好の方が良かっ
た様な気がする。(笑)

 入ってくるといきなり演奏が始まりました。暗くなった場
内でスポットライトを浴びて演奏するミッシャにみんなが吸
い込まれていくようでした。一曲目はバッハの「無伴奏チェ
ロ組曲第3番」佐渡さんも傍に腰を下ろして聴いていました。
2曲目からはオーケストラと一緒に演奏します。サン=サー
ンスの「動物の謝肉祭」から「白鳥」これは非常に優しい音
でした。気持ち良くて寝てしまいたいくらいです。そして最
後は、ハイドンの「チェロ協奏曲」さっきとは違って力強い
演奏でした。僕はそれまでチェロの演奏はあまり聴いた事が
なく、それこそヨー・ヨー・マくらいしか浮かびませんでし
たが、ミッシャさんの演奏に比べるとヨー・ヨー・マの演奏
は優等生と言うか綺麗にまとまり過ぎているようにも聞こえ
ます。ミッシャさんの演奏には逆に陰と言うか生の人間臭い
音が聞こえてきました。とても素晴らしい演奏でした。


ある時は優しく、
またある時は、力強く
まさに彼の人生を
音で表現しています。
 ここで今年のシークレットゲストの登場です。
アテネ五輪で活躍した男子柔道の野村忠宏選手と女子マラソ
ンの野口みずき選手です。
野村選手は小倉さんからの「今日はメダルは持って来ていな
いでしょうね?」の問いにここぞとばかりにポケットからメ
ダルを取り出しました。それを佐渡さんに手渡すと佐渡さん
はじっとメダルを見つめていました。
また小倉さんから「野村選手はそれを3個も持っているんだ
から一つ佐渡さんにあげたら?」と聞かれ「今日感動させて
もらったら一つあげますよ」といつもの野村節を聞かせて会
場を沸かせています。
それに対して野口選手は「あのラストスパートの時は計算し
て出たんですか?」と聞かれて「計算していました。自分に
自信がなかったら出来ません」とキッパリと返事を返してい
ました。この言葉は、僕たちにも凄く勇気を与えてくれまし
た。今日まで一生懸命練習してきたのだから自信を持ってや
ろう。そんな気を起こさせてくれたのです。

 ここで佐渡さんから感動を与えてくれた二人にお返しと言
う事で、二人が戦う姿をVTRで流しながらジュピターの演奏
が始まりました。(今年平原綾香が歌詞を付けて歌っていま
すね)
会場のモニターに映し出される野村選手が勝ち抜いてゆく
姿、ひたすら走り続ける野口選手の姿、そのバックに流れる
ジュピターの調べ。何か胸に熱い物がこみ上げて来ました。
演奏が終って二人に近づく小倉さんからも涙が出てきたと言
う言葉が漏れましたが、実際僕の廻りでも鼻を啜る音がして
いました。僕の隣の方は涙が止まらなかったと言っていまし
た。本当に単純に一生懸命頑張る姿がこれほどまでに人を感
動させるのです。また、このジュピターの演奏がその気持ち
を一層かきたてました。

 ここで、第一部は終了して、休憩を挟んでいよいよ第二部
の第九へと移っていきます。
 30分の休憩が終って第二部の始まりです。
まずはオーケストラの演奏。
 ベートーヴェンの第九は全部で4楽章で出来ています。良く
知られている「合唱」があるのは最後の第4楽章です。それま
で合唱団はじっと座って待っているんです。中には居眠りを
する人もいます。事実、前日のリハーサルではあちこちから
寝息やいびきが聴こえていました。(笑)
でも本番は違っていました。ゲネプロで佐渡さんが今回5回目
になるウィーンのメンバーの一人、ティンパニーのミヒャエ
ルさんが初めて参加したときに「子供の頃に見た虹を見た」
と言うエピソードを話してくれたました。ミヒャエルさんに
もう一度、いやもっと綺麗な虹を見せてあげたい。感動を与
えてくれた野村選手、野口選手に感動のお返しをしたい。先
ほど素晴らしい演奏を聞かせてくれたミッシャさんに僕達の
合唱を聴かせたい。そして、佐渡さんが喜ぶ顔を見たい。多
分、みんな僕と同じ気持ちだったんじゃないでしょうか。そ
れほど何かみんなの気持ちが一つになっているのを感じまし
た。居眠りなんかする人は殆どなくじっと自分達の出番を、
息を殺して待っていました。
 演奏は進みいよいよ第4楽章に入ってきました。
もう既に佐渡さんは汗でびっしょりです。何かに取りつかれ
たかのような表情でタクトを振っています。
ファンファーレのような激しい音になり「さあ、今だ!」合唱
団が一斉に立ち上がりました。バリトンのソロで始めて人の
声が入ります。それに続いて男声合唱の「フロイデ!」合唱
の始まりです。「ズレが殆ど気にならない。」これが第一印
象でした。「ゲネプロのときよりもずっと良いぞ。これは良
い合唱になりそうだ」心の中で思わず叫びました。発声練習
の時のモニター画面のズレに気付いたのがこれほどまでに結
果が出るとは。それと、モニターを見ないで佐渡さんの指揮
をみんなが一生懸命見ているのがまとまりを作っているのだ
ろう。
 最初の見せ場、スケール間のある「フォール ゴーット」
のフレーズ。佐渡さんが引っ張る、引っ張る。これ以上は息
継ぎしないともたないと言うところでスパッと切る。上手く
決まった!
 次は男声合唱のマーチ。みんなで肩を組んで町中を行進し
ている雰囲気です。佐渡さんが楽しそうに指揮を執る。
その後は戦いのシーンである。楽器によってお互いの戦う姿
を表現している。激しく音がぶつかり合う。一瞬の静寂。ど
ちらが勝ったんだ?こちらか?まさか相手か?人々は不安に
なる。耳を澄ます・・・
 そして、遠くからあの聞きなれた音が聞こえてくる。
勝った!僕達は闘いに勝ったんだ!
その喜びに溢れ御馴染みのテーマの大合唱です。ここでは、
恒例のお客さんたちも一緒になっての大合唱になります。
全員が誰からともなく立ち上がって歌います。
 ここで少しスローなメロディーに変わります。空の星の煌
き。世界中の人々は天の神にひれ伏し、その存在を確認する
のです。
 その後この合唱の聴き所の一つでもあるフーガへと入って
いきます。これは4パートがそれぞれ違った歌詞とメローディ
ーで掛け合いになります。ここもなんとか綺麗に歌いきれま
した。
その流れのまま後半へと入り、次々にフレーズが流れていき
ました。佐渡さんも全身から汗を飛び散らせながら快心の指
揮です。
そしていよいよ最後のフレーズ「ザイトゥムシュルンゲン、
ミリオーネン」です。早いフレーズからスローへと変わり、
一番最後の「ゲーッテルフンケン、ゲーッテルフンケン!」
速いテンポの後奏があって無事終りました。

「ブラボー!」 「ブラボー!」

 拍手と歓声に包まれ満足そうな佐渡さんの笑顔が見えまし
た。「終った。無事に歌いきれた。」
演奏し終わった人たちと抱き合って喜んでいる。歌い終わっ
たソロヴォーカルの4人が佐渡さんのもとへと歩み寄る。
司会の小倉さんに呼ばれてsonaちゃんも佐渡さんのもとへ行
く時モニターに映し出された目から涙が零れ落ちた。
最前列で聴いていたゲストの野村・野口両選手もステージに
上ってきます。ミッシャさんも佐渡さんに促されてステージ
へと近づいてきました。
 みんなそれぞれ満足そうな顔をしています。
中でもやはり佐渡さんが一番嬉しそうです。今日のコンサー
トを惜しむかのように鳴り止まない拍手に何度となくカーテ
ンコールを繰り返します。もう終わりがないのではないかと
思うくらいに、裏に入っては戻って来ました。

 場内には「蛍の光」が流れ、暗くなった会場に蛍光ライト
が揺れています。小倉さんの最後の挨拶で今年の「一万人の
第九」は大成功で終りました。
今年の第九は僕にとっても凄く印象に残る物になりました。

 そう言えば、感動させてもらったら佐渡さんに金メダルを
あげるって言う野村選手の話はどうなったのでしょうね。
みんなの前で約束したんだからね〜〜(爆)
 普通はここで終わりなんですが、僕が行っていたクラスは
このあと打ち上げがありまして、場所を移動して締めくくり
です。総勢200人ちょっとの大パーティーです。
 後でわかったのですが、佐渡さんは本番で力を出し切りち
ょっと脱水症状のような感じになって倒れていたみたいで、
イベントの打ち上げにも出れなかったようです。それほどま
でに気持ちが入っていたのでしょう。その為もあってか担当
の清原先生が早くに駆けつけてくれました。今年も佐渡レッ
スンのピアノを担当していた藤崎先生も一緒です。
今年の打ち上げは大いに盛り上がりました。清原先生から、
「今まで何回も第九をやってきたけど、今年が一番良かっ
た。」と、お世辞にしても嬉しい言葉をもらいました。
みんな解っているんです。今年の出来は凄く良かったと。凄
い一体感があった事も。
 恒例の清原先生の誕生日のお祝いに引き続き、月毎にみん
なの誕生日のお祝いが始まりました。最後のピアノを弾いて
いて祝ってもらえなかった藤崎先生に改めてハッピーバース
デイを言って誕生日会は終了です。
 ビンゴ大会などもあって、そして、待ちに待った第九の合
唱が始まりました。
今年は希望者が代わる代わる壇上で指揮の真似事をさせても
らいました。演奏は最初から。なんと今年はバリトンのソロ
からスタートしました。そしてそして、途切れることなくフ
ルコーラスをやってしまったのです。ここでもう一度第九を
フルで歌えるなんて思ってもいませんでしたから、みんな喜
んじゃって盛り上がりました。去年は男声合唱のマーチとテ
ーマの部分だけ(最後もやったかな?)くらいだったのに、
今年はフルですからね。ここでも先生の嬉しかった気持ちが
現れているのでしょう。

 本当に朝から晩まで楽しい一日でした。当然すぐには帰れ
ずに、気の合った仲間達と近くの炉辺へと3次会に繰り出し
ていきました・・・(笑)